題六章

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「…っ、」 黒塗りの車は、音を立てて走り去った。 アーリーの腹部に穴を開けて。 「ちく、しょ…」 呟き、アーリーはその場に倒れた。 「アーリー!」 銃声を聞きつけ、フィールが玄関口から出て来て。 血だらけのアーリーに驚愕した表情を浮かべ走って来た。 「、うっ…」 抱き起こすと、傷口に障るのか顔をしかめる。 「助けてやるから、待ってろ」 フィールは言って、担架を取りに中へ入った。 「それで、首尾は?」 「はっ、若い男に見られましたが片付けました」 蝋燭の灯が灯る、闇に声が響く。 「あの病院に、あの方はいます」 「そうか。あの男を殺さない限り…アイツの身柄はこっちに返って来ないな」 「左様であります」 「分かった。下がれ」 「は、失礼致します」 パタンと扉は閉じられた。 「紗菜…俺の、紗菜…。待っていろよ」 男の呟きは、闇に木霊して消えた。
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