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「では、何もご存知ないと?」
「ええ。私が外に出たときにはアーリー・フェルナンツェは既に倒れていましたからね」
「そうですか。病院をちょっと調べさせてもらいますよ」
「どうぞ、ご自由に。私は患者の様子を見てきます」
フィールが休憩室を出て行くと。
その刑事は呟いた。
「警察が前科持ちと親しいなんてな」
その顔には笑顔すらあった。
彼は、以前からアーリーを嫌っていた。
性格も顔もいいアーリーを逆恨みする人は警察署内でも少なくない。
彼もその内の一人だった・・・。
「失礼致します!」
アーリーのいる部屋が勢いよく開いた。
麻酔の切れていないアーリーはぼんやりとそちらを見やる。
「まことか・・・」
穂沢まこと、18歳。
今年入って来た新人でアーリーの部下にあたる。
彼は心からアーリーを慕う数少ない男の警官だった。
「ドアは静かに開けるものだぞ?」
苦笑しながら言うと、優しい笑顔を湛えた顔が慌てた顔となる。
そんな可愛い部下に。
「ゆっくり閉めて、コッチへ来てくれ」
ウィンバードと接する時と少しだけ違った声音で。
アーリーは言った。
ドアが閉まると、まことはアーリーのベッドに近付き、見舞い用の椅子に腰掛ける。
「先程・・・屋山さんがアーリーさんとフィールさんについて調べると言っていました」
「そうか」
やっぱりな、そう思いながらアーリーは呟くように言う。
屋山が自分をよく思っていないことを知っているのだ。
「俺、フィールさんの過去については知りません。でもアーリーさんが信頼しているなら・・・調べたくないです」
「確かに、信頼はしてるよ。
だからこそ、フィール医師が其れを許可することも知ってる」
「アーリーさん・・・」
「大丈夫だから。心配するな」
「はい・・・」
「ところで。此処に俺の親友が入院してる。俺が無事だと知らせて来てくれ」
「解りました」
まことが出て行くと、アーリーは一眠りするために瞳を閉じた。
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