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……ちっとも変わらねぇな。
煙草を吹かしながら、ウィンバードは助手席に座るアーリーをチラリと見る。
あれから16年。
少しは大人びて来たかと思ったが、どうやら外見だけだったらしい。
「ウィン」
「何だ?」
「…家、あれだよ」
沈みきった声に、ウィンバードは車を停めた。
「大丈夫か?無理だったら残ってていいんだぞ」
「…………ねぇ、ウィン」
「ん?」
「ウィンの家族が殺された時も電話掛かってきた?」
「電話?」
記憶を掘り返す。
だが、家族が殺された時に電話が掛かって来た覚えはなかった。
「………いや。掛かって来なかったな」
「そう…。じゃあ違う犯人なのかなぁ」
「相手は何て言ってきたんだ?」
「…………ごめん。今は言いたくない。後から話すから」
「ああ。分かった」
アーリーは家族が大好きだった。
勿論、ウィンバードも家族のことを好いていたが、表には決して出さなかった。
ウィンバードが極力他人と関わることを避けていたということも、原因の一つだろう。
そんなウィンバードが唯一心を開いた友人がアーリーなのだ。
昔馴染みでもあるし、とぼけてはいても芯は強いアーリーだからこそ、ウィンバードは心の内を何でも話した。
家族が殺されて、以前よりも益々心を閉ざしがちになったウィンバードだが、アーリーだけは変わらず受け入れている。
其れほどに大切な友人なのだ。
そんなアーリーが話したくないと言うのなら、無理に聞く事は躊躇われる。
ウィンバードは運転席を開け、再度アーリーに聞いた。
「どうする?」
「行くよ」
顔色は悪かったが、しっかりとした口調でアーリーは言った。
「ーーーーウィン」
「どうした、アーリー」
「変わらず友達でいてね」
「当たり前だろ」
そう言って、ウィンバードはアーリーの頭を撫でてやる。
ウィンバードの掌の暖かさを感じながら、アーリーはまた涙を流したのだった。
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