初恋よーぐると

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   春風そよそよ。  冬の寒さを乗りきった植物達が、我よ我よと新芽を育むこの季節、俺は人生の分岐点に立たされていた。      この春から俺はようやく大学生を迎える事になる。  前々から住んでみたいなーと思ってた京都の大学を選んで、必死に勉強した甲斐あってあっさり合格。  うん。俺はやれば出来る子。  さてさて。  合格しちゃったものだから地元の愛媛から通える訳もなく、家を離れて一人暮らしを余儀なくされた訳だ。  これは別段問題ない。  どちらかと言えば親と仲が良い方でもないし、昔から鍵っ子だったお陰で炊事・洗濯・掃除はお手の物。今まで当たり前の様にしてきた事だから苦でもなんでもない。    じゃあ何が問題か。  それは至ってシンプルで、同年代なら大抵の奴が抱いてる感情。それが問題なのだ。      ――つまりは恋心。  ずっと好きな子がいたんだけど、どうにも俺は奥手らしく未だに告白出来てない。  その間およそ10年。  今まで歩んできた人生の半分以上の期間、俺の心の中で暴れまわってくれてたその感情がようやく表立ってやる気を見せ出した瞬間に、それを破棄しなければならないかも知れない事態に陥った。
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