稲川淳二の怪談全集

・雪山の死体

これ、実際にアルプスで起きた事件なんですが、ビバークってありますよね。
山登りをして、崖っぷちや狭い岩場なんかで露営をする、あれです。

アルプスの山で、これをやってた人が、寝袋に入ったまま、崖からぶら下がっていると地元の消防団に、通報があったんです。

これはおかしいと。

もう３日間もその状態で、どうやらずっとぶら下がってるらしい。
声をかけても、なんの反応もない。死んでるんじゃないのか。それで、地上から拡声器を使って、声をかけたんです。

「おーーい」

もしこれが聞こえるなら、なんらかの意思表示をしてくれないか━━━━と。

でも、山の専門家に言わせると、有り得ない事らしい。

だって寝袋にぶら下がったまま、死んだりする事はないんですから。

それで身元が分かりまして、ご両親など家族の方々も現地に呼ばれて来ました。

それからまた数日しても、やっぱりなんの反応もない。

それであの断崖絶壁に登って、ロープを引き上げようかって事になったんだけれど、実はこれ、並大抵の事じゃない。難しい。

だからといって、これ以上季節がいっちゃうと、ますます死体が上げられなくなる。

で、とうとう乱暴な話なんですが、ライフルでね、寝袋をつないでいるロープを撃つって事になったんです。

ポン友のカメラマン、新田雅治(仮名)も、早速この現場に行って撮影を始めた取材人の一人です。

東京からいっぱい集まった。民放各社皆揃ってる。

その中でも新田は有名でベテランですから、報道陣のキャップとなって、どこに