序章

2/5
前へ
/14ページ
次へ
  「また白昼夢?」 ユキヒロさんは見透かしたような視線を 『僕』に向けていた。 まだすこし夢みごこちで、 足を地に付けているのか定かではない感覚。 しかし、その状況の割に 夢は何か大切なことだったような 気がする…もう思い出すことは 出来ないけれど、 「何でしたっけ、」 「タバコ、買ってくるよって話。」 微かに微笑むとユキヒロさんは 椅子から立ち上がった。 タバコっていうのは、彼の きっと何よりも大切なもので、 断じる術をたったの三ヶ月に4回も 逃している、つまり依存症という訳だ。 僕は、あの匂いが どうも気に喰わない。 「鍵、開けとくね、下の自販だし」 あぁ、忘れてたという感じに 云ってから彼は部屋を出ていった。 相手に頷く暇さえ与えないのかあの煙は。 それに鍵云々と言われても 僕は外へは出られない、 そんな風にルールづけられているからだ だから開閉の説明は不要なのに…… 多分彼の性格なんだと思う、 ユキヒロさんはお人よしなんだ。  
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加