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「よくわからない? うん……、まあ、理解できなくても大丈夫だよ。さっきも言ったように、不幸なんて考え方次第でどうにだって変わる、そのことを教えたかったんだ」
考え方次第で変わる。
よくわかりませんでした。不幸は不幸ではないですか、どう変えると言うのでしょう。
答えはわからずに、悩んでいるのに構わず彼は幾つか問掛けてくるのでした。ある日もある日も尋ねるのです。その度に疑問が積み重なっていきました。彼の言うことは理解不能なのです。まるで、フランス語で犬と会話するみたいに。
しかし、そうしたことを続けている内に、彼は城壁の内に居住するようになっていたのです。
「蝉って七年も土の中で成虫になるための準備してるって言うよね? それって本当かどうか知らないけど、調べた人って暇人だよね」
彼が言うことに対して適当に頷いたり相槌を打つ、そんな関係になっていたのです。
「そうだ、プリンは好き? なら、今度プリン買ってくるから一緒に食べようよ。いや、特に理由はないけどさ、牛乳プリンってのが気になってね」
そうして私は牛乳プリンと彼が好きになったのです。それが好きという感情なのかはわかりませんでしたが。
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