ケースNo.01 古河夏実『オキザリ』上

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咄嗟に私も後方へと振り返るがそこには何もいない。 「振り返らない方がいい」 「…?」 「君、見られてるから…振り返らない方がいいよ」 「見られてる?」 何に? だって私の後ろには何も…。 「朝ってねけっこう事象の絡みが見えやすくなるんだよ」 「事象の絡み…」 「君は取り込まれる寸前だね…」 「取り込まれるって…何にですか?」 池神さんはゆっくり私の方向に歩き、顔を近付けてくる。 そして私の頭に手を起き訳のわからない言葉を呟いた。 「僕が見たものを、一瞬だけ見せてあげる…目を瞑って」 「何を言って「いいから早く」 私は言う通り目を瞑ると、瞑った筈の瞼の裏にどす黒い丸に赤い瞳のような物が付いた物体が見える。 「ひっ…!?」 私はびっくりして瞳を開けると、目の前には池神さんと元の風景が写し出される。 「いっ今のは…!?」 「言ったでしょ、見なきゃいけない物もあるって…」 「どういう…」 「【オキザリ】だ…」 「オキザリ…?」 オキザリって…置き去りの事? 「数ある事象の1つだよ…まぁ君は信じないだろうけどね」
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