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「仕方がないが…このオキザリには、こっちで…」
池神さんが、そう言って右手を差し出すとオキザリは危険を察知するように姿を一瞬にして消していく。
「…消えた!?」
「いや…消えてないよ、やれやれ戻られちゃったか…」
「戻るって?どこに…?」
池神さんはゆっくりと私に近付き左目にしていた眼帯の中を確認するように覗きこむ。
「な…なんですか…?」
しばし硬直…て言うか近い。
「…いたよ」
「どこに?」
あの…そろそろ顔を離してくれませんかね。
「君の左目に…」
「え…!?」
私はすぐさま池神さんの手をはらい、バックから鏡を取り出し確認する。
「ホントだ…」
鏡に写し出された私の顔には確かに左の眼球が…そこにはあった。
「感覚まで…戻ってる…」
「当たり前さ、オキザリは家に帰ったんだから」
「家…?」
「君の事だよ。家賃無し、光熱費無し、ガス水道代無し、そして事象にとっての食事が朝、昼、晩三食ついてるとなれば…棲みかに適した宿主だと思うけどね」
「棲みかって…!?祓えるんじゃないんですか…!?」
「今は無理だよ、だって今のソレはただの眼球だからねぇ」
「今はって…!?」
「事象は人に寄生している最中は本当の姿を現さない、君の身体から再び左目が離れた時…真の姿を現す」
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