ケースNo.01 古河夏実『オキザリ』上

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私はゆっくりと椅子に座り込み、顔を下げる。 まるで自分の左目を髪で多い隠すように。 「まぁ…そう肩を落とす必要はない」 「え…?」 「事象は深夜から早朝までの時間帯に姿を現しやすい」 「じゃあ…」 「君がどうしても祓って欲しいと言うなら、今日の深夜2時にこの店に来てくれるかな?」 深夜2時…。 丑の刻―――――― 「祓えるんですよね…?」 「…祓ってほしいんでしょ?」 池神さんは、私からどうしても願い出て欲しいように言葉を回してくる。 遠回しだろうか? 何故かこの人の言葉が私を責めている様に聞こえてしまう。 「君は…誰かに、いや…もしくは何かにお願いするって事を今までした事が無いのかな?」 誰かにお願いする…それは他人を頼ると言うこと…そんな事…私は―――――― 「ありません…」 「…そっか、じゃあ今回のオキザリの件はいい教訓になるかもしれないね」 「どう言う意味ですか…」 「お願いしないと返って来ないものもあるって事さ、特に君の歳ならよりいっそう願いの力は強い…それにオキザリは反応を示す筈だ」 「勝手に奪われた物を…何故返すようお願いしないといけないんですか…?」 「頭が固いなぁ君は…そう言う風に言い回すと思って祓う時間帯を深夜に決めたんだ」 祓う時間帯を決める…? 祓うのに時間の指定があるの? 「眼帯はしてこないように…それは彼の棲みかにカギをしているのと一緒だ、それじゃあオキザリは君からは離れないよ」 「…わかりました」
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