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私は固まる父を押し退け居間のテーブルへと急いで向かう。 心の中では無いでくれと願いながら。
「あ…」
そんな儚い願いも叶わないまま、その悪魔の様な現実を突きつける一枚の紙がテーブルの上にはあった。
その紙にはしっかりと父と母の名前。
まるでそれをすんなり承諾するように押した父の実印。
「…夏実、母さんな…」
「あの女ぁ…」
「おい!!夏実…!?」
家を飛び出そうとした私の腕を父の手がしっかりと捕まえるように掴んだ。
「夏実…もういいんだ…もういいんだよ…」
父は私をゆっくりと包み込むように抱きしてめた。
その時私は初めて気付いた…痩せ細った父の腕、まるで骨と皮しか無いような身体つき。
父は仕事の多忙で自分の身体を壊していたんだ…。
「お…父さん」
父は震えていた…。 何かを悔しがるように身体を震わせていたんだ。
「そぅか…」
私のせいか…。
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