ケースNo.01 古河夏実『オキザリ』下

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そうだ…私は見なかった、見たくなかった。 他の男と笑う母親…何も知らずに笑顔で帰ってくる父…。 そんな父に笑顔を振り撒く母親。 そして…そんな家族を理由にし学校にまで無関心に目を向けなかった。 「母が…他の男と一緒に笑う所、父が…それを知らずに笑顔で帰ってくる事…そして父と母の今の状況を受け止められない自分自身…」 自分自身…突き付けられていた離婚の二文字…。 私はそれからも目を背けたかった。 「それが君の目を背けた全てなんだね?」 「…はい」 すると目を瞑っていた私の耳に鈴の鳴る音が聞こえた。 「それじゃあ、ゆっくりと目を開けて振り返ってごらん」 私は言われた通り振り返り、目をゆっくりと開ける。 いや…開けなくてもわかる、そこには何かがいる。 「あ…あ…」 私の後ろには今朝見た黒いオキザリではなく、怒りを現す様な赤い色をしたオキザリだった。 見間違いだろうか姿も球体が少し大きくなってる。 「見えるかい?」 「はい…ハッキリと見えます…でも今朝のとは…」 「今朝のは黒かったからねぇ…君は今日も何かから目を背けようとした」 「…それは」 「その物事を君はオキザリのせいにしようとした…彼も怒っているんだ、君が責任転嫁しようとした事に」 「わ…私…」 動けない…金縛り? 「それは金縛りじゃないよ…君が無意識にその場から動かないだけだ、何かする事があるんじゃないかい?」
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