ケースNo.01 古河夏実『オキザリ』下

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彼は右手の袖を捲り上げ、手から肘までにお酒を浴びせていく。 「何やってるんですか?」 「僕もね何年か前に怪異…つまり事象に取り憑かれた事があるんだ」 「池神さんも?」 「その時、僕は忍野と言う先輩に対処してもらったんだよ…」 「忍野…?」 「大学時代の先輩でね、こう言う物事を専売特許にしている優秀な人だった…」 その時…池神さんの表情はどこかもの悲しげな顔をしていた。 悲壮感の様な物を漂わせるように。 「実際、僕は右腕を奪われただけで済んだ」 「右腕を…奪われた…?」 「僕に取り付いた物は、先輩でもかなり対処に困った事象なんだよ…実際解決はしたが、僕は右腕を返してもらってない」 「返してもらってないって…だって右腕はそこに…」 そうだ…私の見る範囲では、池神さんの右腕はそこにある。 どういう意味…? 「これは後遺症って言うのかな…僕は自分の右腕じゃない物を返されてしまったんだ」 「右腕じゃない物…?」
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