ケースNo.01 古河夏実『オキザリ』上

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「え…あぁ、そんな事はないです」 どうしてわかった? 顔に出ていたか? そこまで分かりやすい顔の作りはしていないぞ。 「そうか…違ったらごめんね、ゆっくりして行って」 すると男性は奥にあった椅子へと腰かけ一冊の本を取り出し読みふけっていく。どうやら商売をするつもりは無いようだ…。 「どうして、そう思うんですか?」 「何が?」 「私が家庭の問題で悩んでるって…どうしてそう思うんですか?」 男性は顔をキョトンとした後、先ほどと同じ笑顔を戻すと視線を本から私へと変えてくる。 「僕の経験上、物もらい以外の【何か】を目に患ってる子は悩みでのストレスが多い子が結構いるんだよ…君くらいの歳なら家庭的な問題が妥当かなと思っただけさ」 何かを患う…? 私は一言もこの人に怪我をしたとかは言っていない。 でもこの人の言う【何か】が私にはウィンクなど行動的な物には到底考えられなかった。 「答えたくなければ答えなくていいけど…その目はいつからだい?」 「目…ですか?」 「いつから開かないの?」 気付いている…。 私の左目が【何か】が原因で塞がれてしまった事に。
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