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「…2週間前くらいからです」
「医者には?」
「行きました…でも原因がわからないって…」
そう医者には何度も行った…でも全員が口を揃えて『わからない』と答えた。
そんな曖昧な言葉を言う医者は私はテレビでしか見た事がなかったけれど…思ったよりショックだった。
「人間の瞳は、いろいろ写すからねぇ形、色…そして感情さえもね」
「感情…」
「見たくない物もたくさんあるハズだ…君くらいの歳なら丁度それが出てきてるんじゃないかな?」
この人の目はまるで相手の感情を見透かすように深い目をしている。
隠し事や騙し事が通じない目だ。
「でもね…見なきゃいけない物もあると僕は思うよ」
「見なきゃいけない物って…?」
「ソレは個人個人多種多様にある一概にソレとは言えない、人間なんだから感情豊かですぐに見たくない物は見つかる…ただしあまり見ないでいると、二度と見れなくなる子もいる」
「二度と見れなくなる…」
その言葉に私は息を飲む…何故かそれ全て私に突き刺さる様な言葉に聞こえたからだ。
「見たくない物を見ないのは人間の条件反射であり物事の事象でもある」
「事象…」
「でもその事象に捕まりすぎると…二度事象から離れられなくなるよ」
「それ…私に言ってます?」
「いや…僕は君自身に向けては言ってない、ただ…『君自身が僕に自分の事を言われてる』様に頭が錯覚してるだけさ、まるで自分の事を全て見透かしているみたいに言われてるってね…」
その瞬間私の背筋に嫌な予感がして、私は店を飛び出した。 男性にも何も言わず。
「あらら…あの子厄介なのに捕まってるねぇ」
そう言って男は再び本へと視線を向けていく。
いったい彼の目には彼女がどう写っていたのだろう。
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