水の都アトランティス

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ニルアーニは槍を背に差し、腰に剣を携えて、グリフォンの背に乗っていた。周りから奇異な視線や好奇の視線を向けられるが、通行の邪魔になることはなかった。 グリフォンの首にかかった綱を握り、周りを見る。 下町とはいえ、さすが水の都だった。 右手には店頭が並んでいた。比較的魚介類を扱うところがほとんどのようで、人の大きさをした巨大魚などが店先に吊され、ここから覗ける店内には奇怪な形をした魚や、海老、貝などが並んでいる。 そのような店がこの大通りのさらに先まで続いていると考えたら、ニルアーニは都の富裕さに呆れた笑みを浮かべた。グリフォンが魚介類に物欲しげな視線を向けているが、今は買ってやれない。 続いて左手を見る。 下町から貴族街を越えて最後には城に至るこの大通り、とても広かった。ここを都の王や女王、その子供である王子に王女らを乗せた馬車が通るのだと考えると、納得できる幅だった。 そんな大通りだからか地面の意匠は細緻に美しいものだった。 「さすがは水の都アトランティス。素晴らしいね」 ニルアーニは僅かに顔を輝かせて呟いた。彼はここから遠いところにあるクレンニャという、広大な草原に囲まれた小さな村に育った。むろん、村でこのような光景は垣間見ることすら出来ないため、ニルアーニが驚くのは無理なかった。
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