お弁当

3/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「私お昼誘ってみるね」 そう言ってくれたのは咲月ちゃんだった。 今年の一年生からレタリング検定試験というものを受験することになった。本来レタ険は2年生からの受験らしいのだが…レタ険の練習内容はいたってシンプルで、レタリングをこの時はひたすらやることであった。デザイン授業はすべてこれに費やされていて、この日は、3時間連続だった。つ・ま・り、仲良くなれるチャンス!別に話そうとすれば話せる状況であって、決して困難ではない。そこを咲月ちゃんは狙ったのだ! 「じゃ、言ってくるね」 そう言って私と真由美ちゃんは横目でちょろっと見ていた。 コツコツコツ―。 明らかに咲月ちゃんの怒りの足音が聞こえる。 「どうだった?」 何となく予想はついていたが一応聞いてみる。 「初めは頷いてくれたけど、『お弁当食べよ』ってフツーに誘ったら無視された。」 予感は的中。これで喧嘩がヒートアップしたらたまったもんじゃない、そう思ってすかさずフォロー。 「もしかしたらだけど、喧嘩していて、こっち側の人間の言うことが嫌でもマイナスに聞こえちゃうんじゃないかな?」 そう言うと、「そうだね」と言って納得してくれたが、やはり理由は知りたい。そう思って今度は私が行って話を聞くことに。 「言い方が気に入らない。」 「でもさ、今はこの状況だし、もしかしたらそう聞こえただけかもよ?」 自分だってどんなに仲良い友達とケンカしていればそういう時だってある。そういう意味で言ったのだが。 「なんで謝ってくれないの?」 ああ言えばこういう、こう言えばああ言う。まぁ、自分の受け取り方も問題だろうと思った。彼女もそう思って言っているのだろうか?まぁ、今のところ攻めるつもりはないが。 「私どうしたらいいのかわからない…」 そう言って彼女の瞳はううんだ。 こっちが泣きたいぐらいだ― どうでも良いような理由でこんな状況になって…こっちの気持ちも考えてみろよ。 「ウチが分かんないよ…」 悔しさのあまり涙が出た。その時彼女は「はっ」とした様に私からは見えた。 どうやら気遣ってくれたらしく話題を変えてくれたが、私の思いは届いただろうか…? この日のお弁当か結局私と麻綾ちゃんの二人で食べた。3人は理解はしてくれたが、どこか何食わない表情をしていた。気持ちはわからなくもないが…
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!