錯綜

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ついに文化祭はやってきた。 1日目。 クラスでの出店。 俺のクラスでは無難な喫茶店をやっている。 ――ハズだった。 「焼きそば オーダー入りましたっ長瀬中将!!」 「馬橋中尉、 5番テーブルにコーヒー運んで!!」 どこかの軍のコスプレさえしてなければ、普通の喫茶店だ。 あ…あり得ねー…! ピシリときれいに着こなされた群青色の制服に、白く薄い生地の手袋。さらに頭上にのっている硬い軍帽。 俺は1人だけ座ったまま慌ただしい喫茶店内の様子を眺めている。 「すごい不機嫌だな、大将!」 この喫茶店を発案した大介が愉快そうに笑った。 「……恨むぞ。何で俺だけこんな椅子に座ったままなんだよ!?」 えらく豪華そうな黒い椅子に脚を組んで座らされている俺。 「良いじゃねぇか、ヘッドホンの代わりに立派な帽子被ってんだしよぉ」 「顔隠し気味のが大将っぽくね?」と呟いて俺の軍帽の鍔をつまんで角度を調整する大介。 「土蔵来ないな、今日は休みか」 とぼそぼそと耳打ちされて俺は眉をひそめる。 確かに優衣はいない。 仕事だと思うから仕方ないが……。 「楽しい事はみんなでやった方が楽しいよなァ」 ため息混じりに呟かれた大介の言葉に頷きそうになるけど。 「……おい、大介。 俺全く楽しくないんだけど?」 そう俺に睨まれた大介は口元だけで笑う。 「犠牲はつきものだよ」 なら自分が犠牲になれよ……。
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