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「京一、お前空き時間どうすんの?」
「……。俺に予定がなかったらどうするんだよ。まさかこの格好で他のクラス回ろうとか言わないよな?」
そう俺が聞くと大介は視線をさまよわせながら「まっさかぁ~」と笑う。
間違いなく言うつもりだったな。
ガヤガヤと活気に満ちているクラス。
そして、
「写真良いですかぁ?」
と俺に言ってくる外来客(主に女)。
その度に大介が歩いて来て「シャッター俺が押しますよ」と、格好つけているつもりなのか自分の顎に手をそえて決めポーズ。
俺は、許可してないぞ。
俺の意志を総無視する大介に反発した俺は、写真を撮る時は軍帽ですっぽりと顔を隠してやった。
「何で隠すんだよ、せっかくオヤジさんとおばさんを足して2で割った感じの整った顔なのに」
「……それは似てるのか?」
そう聞けば、大介は「うんにゃ…」と首を振る。
「似てるには似てんだけど、お前は良いトコ取りだから2人より完成度が高い」
「お前、意味分からないから口閉じといた方がいいぜ、大介」
夏なのに長袖の軍服を着て働かされているクラスメイトの唯一の救いは、この教室にクーラーがあることだけだろう。
あ。女子は軍服を自分達でアレンジした服でな、上は群青色の生地に白い縁取りのある半袖にスカート。
「もう原形留めてないじゃん」とかツッコミを入れた、とある男子は教室の隅で女子と同じ制服を着せられている。
突っ込まなくて本当に良かった、と俺達が心底思ったくらいだ。
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