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体育館のステージでは演劇がやっていて、ポピュラーな昔話である桃太郎をもじった『桃太郎(悪)』。
桃太郎が鬼より悪人だったらどうなるのか練りに練った話らしい。
けど、桃太郎が悪人だったらって話結構聞くよな。
「桃太郎さん、桃太郎さん!腰に提げている袋の中のきびだんごを1つくれたらついて行きますよ」
猿が言った。
「はぁ?何で俺が猿なんぞにきびだんごをやらにゃならんのだ!」
と、軍服を着たぽっちゃり体型の桃太郎が――…。
「おいおい……」
あまりの出来事に俺は目眩がする。
「ついてきて欲しいなんて誰が言った!俺にはすでに仲間がいる!!」
そうしてステージに上がった大介はいつものようにビシッと指で俺を指すんだ……。
「京一ィ!!」
演劇を見ていた人々の視線が一斉に俺に向く。
効果音をつけるとしたらバババッ!!だな。
「明日午後1時30分、俺!…と京一の歌を聞きに来い!!」
大介はそれだけ言うと、「劇、中断させて悪かったな」とぽかんとしている桃太郎役の1年の肩をポンと叩いてステージから降りた。
自分中心にも程があるだろ……。
そう呆れている俺も周囲からしてみれば大介の仲間なのかもしれない。
とことん大介のペースにはまってるな、と今はただただ苦笑するしかない俺。
GLOWで螢として過ごした時間には遠く及ばないけれど、
俺は、大介といるこの馬鹿げた時間が嫌いじゃない。
――GLOW…。
本当にこのまま終わってしまうのか?
「そんなはずはない」
なんて安易な言葉、
あいつらを見捨てた俺には、もう……言い切れなかった――…。
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