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その頃所属していた事務所で俺は、新しく事務所に入って来る4人と組むように言われた。
1人で歌う事にこだわっていた俺にとってそれは不愉快な事でしかなく、
「は?やだよ」
と絶対首を縦に振らなかった。
事務所もそれ以上強要せず、しばらく時が過ぎた冬のあの日――…。
久しぶりに事務所を覗いた俺は社長がため息をつく姿を見て首を傾げた。
「どうしたの?」
「あ…ああ、螢君か」と言って気弱そうに笑う社長。
「……私は彼らに足りないものを埋めてやりたいんだ」
彼らというのが新人の4人であることはすぐに分かった。
「ふーん…」
新人の話ばかりされてちっとも面白くなかった俺は、座り心地の良い社長専用ソファーに座り、投げ出した足を無意味にぶらぶらとさせていた。
「螢君さえ良ければ、彼らに足りないものを君が埋めてやってくれないか?欠けている最後のピースになってやってくれ」
「や~だね!」
そう言って立ち上がろうとした俺は、この部屋の向かいの練習室から聞こえてきた知らない歌声にかなり驚いた。
立ち上がりかけたままでしばらく固まっていたと思う。
「……っ!?」
「あぁ、ほら始まった。彼らは君と同じで本当に練習熱心だね」
彼ら、と聞いて俺は信じられなかった。
……これが、新人?
上手いのもあるが何より、聴いている人を惹き込む魅力が彼らの声とハーモニーにはあった。
「本当に……惜しいね。彼らに君が加われば完璧なのに……」
何度も繰り返してそう言う社長の言葉は俺の耳には入って来ない。
4人の歌声だけしか聞こえない。
「社長……、おれ、」
しびれるような興奮に頬を紅潮させている俺を社長は「ん?」と見る。
未完成な彼らを、自分が補ったその瞬間に生まれる音を聴いてみたい。
「最後のピースになる――…!」
..
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