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金髪の学生が発する声は竹澤の全身を驚愕と興奮で震えさせた。
響き渡る旋律や、
ビリビリと直に伝わってくる想いに、
呼吸すら忘れて聴き入ってしまう。
「なんてこった……。こんなガキがいやがるなんて……ッ」
完成された音に、
完成され過ぎた歌に、
感動を通り越して恐怖すら覚えた。
『君もきっと天才に出逢うよ』
竹澤は尊敬する人物の言葉を思い出して鳥肌の立っている肌をぶるりと震わせる。
――これが、天才……!
『私が見つけた天才は仲間と組む事でより力を発揮する少年だったよ』
あの人は、そう言って自分が育てていたグループの話ばかりしていた。
GLOWをぬけた、少年の話を……。
「――いや、待て」
もしかしたら、
あのガキもそうなんじゃないか?
仲間と組む事で
本当の実力を発揮する天才。
金髪の学生を見ながら竹澤は深く考える。
GLOWの才能は枯らすには惜しい。
螢という1人の天才がぬけた穴を埋める事が出来るのは、同じ天才だけだ。
「……これは、使えるなぁ、おい?」
素晴らしい人材を見つけた竹澤の表情は喜びに満ちていた。
この時はまだ、知らなかったのだ。
偶然見つけた天才の正体も、
その天才が抱えている想いも。
――そして、
今までスムーズに仕事をこなしてきた竹澤は、初めて苦戦を強いられる事になる。
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