偶然

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俺はとある雑誌を見て、死んだ。 肉体が死んだんじゃない、 心が死んだんだ。 『桜華高校の文化祭に現れた金髪の天才』 あぁ…、桜華高校ってのは俺が通ってる学校だからな。 『彼は素晴らしい才能の持ち主だ。 数々の歌手を見てきた私が彼の歌に感じたのは、無限の可能性』 ……以下略。 あ…っ有り得ない!! 何度見ても変わらない雑誌の内容に俺は打ちのめされた。 写真が載ってないのが唯一の救いで、 大介の家で「オイこれ見てみろよ」と雑誌を手渡された時はショックで口もきけなかった。 家の俺の部屋は気持ちを落ち着かせてくれて、今は色々と考える事が出来ている。 「……竹澤流」 GLOWを酷評した人物だ。 ……何でそんな奴が 高校の文化祭に来てんだよ!? しかも ピンポイントに俺の歌聴くなんて……っ! 最も理解出来ないのが、 『天才』 俺はベッドでゴロゴロとしながら枕に顔をうずめて……、 「天才って誰だ!?」 叫ぶ。 枕のおかげでくぐもった声になっているため、俺の声は部屋の外には漏れていないはずだ。 『無限の可能性』 「有限!!」 ツッコミを入れてみる。 歌わなければ良かったと俺は本当に後悔している。 ……でも、 歌わなければ俺は あいつらと歌う事に意味があったのだと、気付けなかったはずだ。 諦める事も出来なかっただろう。 歌ったおかげで、ただのGLOWのファンになる事が出来た。 「まぁ、雑誌に載ったくらいで俺だと気付くはずないしな」 自分を納得させるためにわざと声に出す。 ……大丈夫だ。 あいつらの邪魔には、 ならないはずだから。 解散間際とまで言われているGLOW……。 ――どうしてるかな。 あいつらの事だから一杯悩んで、 苦労して、 今日もまた歌っているんだろう……。
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