399人が本棚に入れています
本棚に追加
/141ページ
「怒るなよ、悪かったと言っている。
あ…そうだ。ホラ、せめて奴の形見だけでも返すよ」
似蔵は懐から、束ねられた髪を出した。四人の目は開き、微動だにしなかった。
「記念にとむしりとってきたんだが、アンタらが持ってた方が奴も喜ぶだろう。
しかし桂ってのは本当に男かィ?」
束ねられた髪を高く掲げ、似蔵はその髪の束を嘗めた。
「この、なめらかな髪…まるで女のような…」
ガ キ ィ ィ ン
その瞬間、銀時と餡は似蔵に斬りかかった。
似蔵はそれらを刀で受け止める。
「何度も同じこと言わせんじゃねーよ。
ヅラはてめーみてーなザコにやられるような奴じゃねーんだよ」
「何度も同じこと言わせんじゃないわよ。
小太郎はあなたみたいなザコにやられるような奴じゃないわよ」
銀時の声は明らかに、殺気立っていた。目元には血管が浮き出ている。
同じく、餡の声もトーンが違っていた。そして瞳孔が半分ぐらい開いていた。
「クク…確かに。俺ならば敵うまいよ。
奴を斬ったのは俺じゃない。俺は、ちょいと身体を貸しただけでね。
なァ…『紅桜』よ」
「なっ!」
似蔵の持つ刀から触手みたいのが伸び、うねうねと動いて脈を打っている。紅桜は段々と似蔵の手にくっついているようだった。
そして刀が大きく、太く、長く、不気味に紅く、光りだした。
最初のコメントを投稿しよう!