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人の声がしたので、一人と一匹は路地裏に隠れた。
「どうだ? 見つかったか」
「ダメだ。こりゃまた、例の病気が出たな岡田さん…」
「どこぞの浪人にやられてから、しばらく大人かったってのに」
「やっぱアブネーよ、あの人。こないだも、あの桂と斬ったとか触れ回ってたが、あの人ならやりかねんよ」
「どーすんだお前ら、ちゃんと見張っとかねーから。アレの存在が明るみに出たら…」
神楽は紙と筆を取り出し、何か地図みたいな物を書いた。
「定春、お前はコレを銀ちゃんたちの所へ届けるアル。
かわいいメス犬がいても寄り道しちゃダメだヨ。上に乗っかっちゃダメだヨ~」
定春は紙をくわえ、走り去っていった。
「よし、行くか」
無事定春を見送ったあと、神楽は傘を持ち、船へと乗り込んでいった。
屋根の上には一つの黒い影があった。
その者は三度笠を被っており、その一部始終を見ていた。
黒い影は、いつの間にか闇に溶け込んでいた。
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