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「…刀なんぞはしょせん、人斬り包丁だ。どんなに精魂こめて打とうが、使う相手は選べん。
死んだ父がよく言っていた。私達の身体にしみついてる言葉だ。
兄者は、刀をつくることしか頭にないバカだ。
父をこえようと、いつも必死に鉄を打っていた。
やがて、より大きな力を求めて機械(からくり)まで研究しだした。妙な連中とつき合いだしたのはその頃だ。
連中が、よからぬ輩(やから)だということは薄々、勘づいていたが私は止めなかった。
私達は何も考えずに刀を打っていればいい。それが、私達の仕事なんだって……わかってんだ、人斬り包丁だって。
あんなモノはただの人殺しの道具だって…わかってるんだ。…なのに、悔しくて仕方ない。
兄者が、必死につくったあの刀を…あんな事につかわれるのは、悔しくて仕方ない。
…でももう、事は私一人じゃ止められない所まで来てしまった。
どうしていいか、わからないんだ…私はどうすれば…」
「どうしていいのかわからんのは俺の方だよ」
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