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「穴明け終わったら、そこのパイプかついで持ってこい」
「バルブからフィルターまでの寸法はかっといてくれ」
「まっかせなさーい」
智は小さい頃から器用で運動神経もバツグンだった。
その日はうだるような暑さだったが、いつものように現場を飛び回っていた。
家に帰れば気は強いが優しい嫁さんとよちよち歩きの坊主が待っている。
「おう、ちょっとそのサシ持って上がってきてくれ」
親方が言うが早いか智は足場の上を軽やかに駆け上がっていった。
と、無造作に置かれた一本のパイプに足をとられたかと思った矢先、智の体は宙を舞った。
首にかけられたペンダントが開いた。3人の笑顔が下に落ちていく。
「愛美、大毅…」
天を見上げた智の横に銀のジッポが鈍く光っていた。
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