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僕にとっても、紗羅は確かに"大事な人"だ。でも、それはただ紗羅が今の僕の主であって、友達という意味合いでの話だ。
恐らく、紗羅の言う"大事な人"とは意味合いが違うだろう。
そんな僕が紗羅の気持ちに答えようとしたら、紗羅に失礼でもあるし、傷つけてしまう。
僕はこの時程"好き"の意味を知りたいと思わなかった。"愛"の意味を知りたいと、強く思わなかった。
「紗羅の気持ちに応えたい」
僕は強く、そう想った。
「・・・・・そんな顔をしないで下さいな」
「あっ・・・・・」
不意に、紗羅は僕の背中を抱き締め、言った。
「私は晶弥にそんな顔をしてもらう為に言っている訳では無いのですよ?そんな顔をされては、逆に私が傷つきます」
「・・・・・ごめん」
「焦らないで下さいね?じっくりと時間をかけて理解していきましょうよ。私が・・・・・私達が教えて差し上げますから。ね?私は大丈夫ですから。こうやって想いをあなたに伝えるだけで充分ですから」
「・・・・・君は、強いね」
「晶弥程ではありませんわ」
後ろを首だけで振り返ると、そこには紗羅の笑顔があった。
紗羅だって辛いはずなのに、とても明るい、可愛らしい笑顔だ。
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