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「紗羅。僕はね、花火を見るの初めてなんだよ」
僕は花火を見上げながら言った。
「えっ?!そうなのですか?!てっきり何回も見たことがあるものと・・・・・」
まぁ、驚くのも無理はないよね。
「昔、一度だけ両親とお祭りに行った事があるんだけどね。疲れちゃって寝ちゃったせいで見られなかったんだ」
我ながら情けない話だよ・・・・・。
「クスッ そうだったのですか。では、いかがですか?初めての花火は?」
そんな事、決まってるじゃないか。
「最高だよ。紗羅、ありがとう」
僕は自分でも分かるくらいの満面の笑顔で、紗羅に笑いかけた。
「そうですか。それは良かったですわ」
紗羅も、そう言って僕に笑いかけてくれた。
今日一番の、紗羅の笑顔だ。
その時、今日最後の沢山の花火が一度に打ち上がり、僕達を強く照らしていた。
まるで、夜空から贈られた花束の様に。
fin・・・・・・
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