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サスケが出て行こうとしてドアノブに手を掛けた常態で固まる。オレが、オレ自らサスケに口づけたのが原因か。そういえばオレからするのはこれが初めて、か。でもこれくらいならいくらオレでも赦されるだろう。最初で最後なのだ。いいだろこれくらい。サスケも嫌がるそぶりも見せない。
「………なんだ、その顔」
なんか、嫌がってはいないみたいだがめちゃくちゃ微妙な顔してた。なんか、なんでか、腹立つな。自分からは、これ以上の行為を望んでくるくせに。
「…………ナルト、誘ってんのか」
「違うけど」
「お前からして来たの、初めてだ」
「嫌だったか」
「まさか」
オレより一回りでかい体で抱き寄せてきたサスケ。甘えるのが好きだったな、お前は。オレにだけだったけど。暖かいと、温度が感じられて良かった。オレはまだこっちに居る。そうだろ。
「もう行けよ」
「…オレはこんなオイシイ状況でお預けを喰らわなきゃいけないのか」
「今度、相手してやる」
「ほんとだな」
嘘だよ。今度なんて無い。もうこれで、お前とは終わり。いやこの言い方は間違ってるか。とにかく、これでさよならだ、サスケ。今までありがとう。誰よりも慕ってくれたなオレのこと。オレの側に居たら不幸になるよ、絶対後悔するようになるって言ったらお前こう言ったよな。お前、覚えてるか?覚えて無いだろうな。もう十年位前にした話しだもんな。オレは覚えてる。なんでか忘れられなかった。
『オレは今、お前に出逢えたことで一生分の運を使い果たしたんだ。十分ここで幸福なるべきだろ。それなのにどうして後悔する必要がある?』
こういう時、オレが普通の人だったら泣いていたのだろうか。泣くところだったのだろうか。生憎、オレの表情は崩れなかったと思うし、目頭すら熱くならなかったよ。やっぱりオレは普通じゃなかったんだ。バケモノ以外の何物にも成れなかった。里のアイツラの罵声も、あながち間違ってなかったと思うよオレは。
うずまきナルトは化け物。それだけのことだ。
「――じゃ、今度こそ行ってくる」
「ああ」
「今日中に帰ってくる」
「三日は掛かるだろ」
「お前が寂しい思いをするだろ、オレがいなきゃ」
「無い」
「……即答かよ」
ま、いい。呟いて男は一度だけ振り返った。端正な顔で笑う。
「愛してる」
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