恩 返 し

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保名さまは、私の名前を聞くと、小さく『葛の葉』と呟く。その声を聞いて、また心の臓が跳ねる。だが、さっきとは違う跳ねかただ。ドキドキとしている。どうして?このドキドキは何? 私がうつ向いたまま黙っていると、保名さまが心配そうにしているのが気配でわかる。手を伸ばそうとしている保名さまの手が止まる。 「う~ん!!」 そう、お付きの方が目を覚ましたのだ。お付きの方は、保名さまを見て、 「保名さま!!もう、大丈夫なのですか?!」 その言葉に、保名さまはニッコリと笑って、 「心配かけたな。安則。」 とお付きの方、安則に声をかける。私はさっきからうるさい心の臓を必死に押さえながら、 「私、朝食の準備をしてきます。」 と言って外にでた。
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