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夢を夢とも
いつもの様に夕陽に染まった河原を散歩していた時だった
突然視界に現れた俺の最初の犠牲者が問い掛けてきた
[何故殺すのか?]
ついつい首を傾げてしまう
意味なんかあったっけ?
「前に踏み出すためさ」
自分らしく其らしい答えを返す
[嘘だな]
あっさりと見破られてしまった
何故分かったのさ?両の手のひらを返して彼に聞き返す
[お前は誰も殺してはいないからな]
あの頃と同じ様に微笑みながら彼は消えていった
[何故君は僕を裏切ったの?]
消えた初めの彼の代わりに二番目の犠牲者が俺の背後にいた
[何故君は僕を裏切ったの?]
聞き直すなよ
ちゃんと聞こえてるよ
「前に踏み出すためさ」
俺にそれ以外の理由なんてあるだろうか
[また嘘をつくんだね]
やれやれと頭を揺らしながら彼も消えていく
またあの頃と同じ笑顔を見せて
直ぐに次の亡霊が現れた
今度は彼ではなく彼女
三番目の俺の犠牲者だ
[私は何を貴方に聞けば良いのかしら?]
困った様に苦笑いを浮かべ彼女が聞いてくる?
「まだ君で三人目だよ?」
俺もまた苦笑いを浮かべ触れる事は出来ない
彼女の頭を撫でようと手を伸ばす
分かっていたが手は彼女をすり抜けて何も触れる事は出来なかった
なんだか心に冷たい風が吹いた気がした
[決めたわ]
そんな僕を見た彼女は何故だか泣きそうな顔をしている様な気がした
「何を聞くの?」
[いい加減ここから出て行きなさいよ馬鹿…]
それは質問でもなんでも無いんじゃないか?
ん?っと少しの間を置いて俺の頭の中は特大のクエスチョンマークに埋め尽くされた
「ここって…そういえば此処は何処だっけか?」
辺りを見回すが此処はもう見慣れてしまった夕焼けに染まった河原だ
「此処は何処だっけ?」
誰彼構わず聞いてみる
だけど俺の周りには誰一人もういない
だからきっと彼等の質問の答えも此処が何処なのかも
自分で気付くまで分からないのだろう
只立ち尽くすのも何だからまた俺は夕焼け色の河原を歩き始めた
もう少しで目が覚めそうだったから
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