58人が本棚に入れています
本棚に追加
**
それは不思議な手紙だった。
自分は書いた覚えがないのに、
とても心に響いて共感を覚えるものだった。
それが自分の弟と
この手紙を宛てられた人物の名前が
単に一致していたからなのか、
それとも他にも要因があったからなのか。
それは彼女には分からなかった。
「お―――――い、リン!
母さんが早く帰って来いってさぁ――――!!」
後ろから彼に呼ばれ、
彼女は手に持っていた紙を丁寧に折りたたみ、
小瓶はもう一方の手で握って
彼の元へと走っていった。
「電話、お母さんからだったんだ?」
「ん。
そろそろ飯できるから
さっさと帰って来いってさ。
…………ってか、お前何拾ってきたんだよ?」
「え~?
何だろう、手紙かな?
だけど最後の部分は文字が滲んで
もう読めなくなってるんだよね………。
瓶は浸水していないのに…………。
不思議ね。」
「ふぅん………………。
にしても、そんなもん拾ってくるなんて、
リンもモノ好きだな?」
「……………なによ、音楽ばかが。」
「な………!!
お前、音楽ばかにすんなよ!!??」
「別に音楽はばかにしてないわよ??」
「何を―――!!?
んじゃ僕の方がばかだって言うのか???」
ぎゃあぎゃあと騒がしくケンカする二人。
しかし、どころか楽しげに見える二人は
そのまま家路へとついていくのであった。
最初のコメントを投稿しよう!