川村靖子

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すでに、身寄りを失ったみじめな女に、行くあてなどありません。 赤ちゃんと一緒に、わたしも死んだのです。死んだ人間が、何をする気にもなれず、ただ、あの人から逃げるために、さまよい歩き、気がつくとホームレスになっていました。 初めての夜は、怖くて怖くて、どうしようもなかった。 自分がみじめでみじめで、悲しくって、仕方がなかった。 死んでしまいたかった。一度死んだ人間なのに、怖いなんておかしなものです。一晩中歩き続けて朝を迎えて、やっと安心してダンボールの中で、眠ることができました。 人気のない公園で。
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