川村靖子
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家を出たとき、わたしはまだ38歳でした。生まれつき不細工で、なにひとつ取りえもないわたしは、生きる気力をなくし、行政に頼ることも考えつきませんでした。 いま思えば、そうすればよかったのでしょうけれど、頭が悪いのです。あの人に見つかることが、なにより怖かった。 気がつけば、住んでいたS県を離れて、東京の多摩川に来ていました。ここでホームレスの仲間に支えられ、なんとか生きて来られたのです。
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