川村靖子

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50歳の冬、偶然見た、新聞記事に、修一様のことが書いてありました。 お父様の会社の新しい取締役に、就任されたという、その記事は、わたしに過ぎ去った昔の記憶を呼び起こさせました。 なんという境遇の違いでしょうか。あなたは、一流会社の社長で、わたしは、ホームレスの売女。 あまりの残酷な人生の違いに、涙が止まりませんでした。 大学4年の夏。最後の日本アルプス登頂に、連れて行って欲しいと、泣いて頼み込んだことを、あなたは覚えているでしょうか。 あなたは蔑んだ目で、わたしに言いました。 「おまえには無理だ。足手まといになるだけなんだよ。おとなしく留守番してろ」 そう言って、他のメンバーたちと笑ったのです。笑ったのです。 そう声をあげて、笑ったのです。 ああ、また涙があふれてきました。 あの時の、悔しくって、ひどくみじめな気持ちは、今もちっとも変わらない!変わるもんですか!あの時からきっと、わたしの人生は狂ってしまったのよ! 復讐したい。わたしの青春と人生を返して欲しい。 そんな思いにとりつかれました。
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