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一人の女性が自ら命を絶つまでの一ヶ月間を記した手記である。
ただの大学ノートに、綺麗な文字でしたためられたそれは、一目見ただけでは、ホームレスの65歳の女性のものだとは、だれにも分からないだろう。
ここに、その全文を記すまえに、まずは私のことを書いておかなければならないだろう。
私の名前は渡部修一。現在65歳で、彼女、川村靖子と同い年だ。
某大手服飾メーカーを定年退職後、私はホームレスの川村靖子と出会った。いや、正確には彼女は私と出会うチャンスをずっと伺っていたのだ。
それとは知らず私は、いつもの多摩川沿いの散歩道で、うす汚れたホームレスのおばあさんに声を掛けられた。
手記は、そこから始まっていた。
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