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川村靖子。
痩せぎすで、陰鬱な影の薄い女だった。そのうえ、斜視で左右の目の焦点がずれているために、見つめられると、こちらが透明人間にでもなったような、奇妙な感覚におそわれた。
川村が、何か言いたげな目を向けるたびに、その感覚に捕われ、それが私を無性に苛立たせた。
若い頃の私は、環境に恵まれプライドも高く、虚栄心にまみれ、手に入らないものなどないかの如く、振る舞っていた。
川村の目は、そんな裸の王様の私を見透かす目だった。
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