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「聖夜さん、ルルは?」
隣に座った仲間が言った。
「さあ、さっきどっか行って戻って来てねえな…」
言いながら、背筋を嫌な汗が伝い落ちるのを感じた。
「聖夜さん、またルルさんを怒らせるような話したんじゃないすか?」
呆れ顔の翼に、まさかまさかと手を振ってみせる。
「だってさっきは、後輩が俺んとこ来て、少し話してて…」
「聖夜さん、その後輩の頭撫でたりしてたじゃないすか。ルル、普通に嫌な顔してましたよ」
「はっ、早く言え、そういうことはっ!!」
聖夜は勢いよく立ち上がり、周りを見回した。
生徒達、仲間達、夢が丘の若者、大人達。
その中にルルの顔を探す。
「………」
一瞬。
不機嫌な横顔が見えた。
「ルル…」
目が合い、聖夜は駆け出す。
その顔が笑ったように見えた。
すぐに人に紛れ、見えなくなってしまう。
聖夜は手を伸ばし、人をかきわけ、進んで行く。
伸ばした手を、誰かが掴んだ。
それがルルかは分からない。
聖夜はルルであれと強く願い、手を引き戻す。
「ルル!」
End
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