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空気も穏やかな季節になった。
上着をコートからブレザーに変え、第2、第3ボタンまではずしたシャツに、鮮やかなグリーンのネクタイを引っかけて歩く夢が丘学園の生徒達。
その中に聖夜もいた。
「こうも毎日あったけえと歩いてても眠くなるな」
「お前はいつも眠いんだろ」
隣を歩くルルの冷静な返しに、聖夜は眉根を寄せて頬を膨らます。
そのまま横目でルルを盗み見た。
そよ風に吹かれる柔らかな髪。
少しだけ桜色に染まった頬は、肌の白さを際立たせている。
どこまでも青い空の下、どこまでもムスッとした表情…
聖夜は思わず呟いた。
「春ルル」
「は?」
睨み付けてくるルルの頭を優しく撫で、聖夜はだらしなく笑う。
「春が似合う男だよ、お前は」
「…馬鹿にしてんのか?」
「してないって。本当に似合ってるぞ、自信を持て」
「…そう言われてもな…」
「可愛い!」
浮かれ気分の聖夜は、そのままルルの頭を乱暴に撫で回した。
「やめろ、この馬鹿!」
振り払われた手を、今度はルルの肩に回す。
「なあ、学校行くのやめて遊ぼうぜ」
「嫌だ」
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