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『う…』
気付けば、時計は夜の2時を指していた。
『はぁ…嫌な夢見たな…』
彼岸花が人を喰う夢なんて、そうそう見るものじゃない。
…何だ?何か、嫌な予感がする…
『…あれ?砂時計が、ない…』
何故?
寝る前はあったはずだ。
落ちてるわけでもない。
《ココダヨ…》
『!?』
何だ?今、誰か喋らなかったか?
《シタニ、イルヨ…》
やっぱり誰かが喋ってる。
下に、いる?
下…一階…
『…っ!』
嫌な予感は、やっぱり当たってしまうのかもしれない。
弾かれたように部屋を出て、階段を駆け下りる。
《コッチ、コッチ…》
謎の声に誘われるまま、廊下を走る。
そして、辿り着いた寝室のドアを勢いよく開けた。
『母さん!』
そこには、ついさっき見た光景。
真っ赤な真っ赤な花。
彼岸花が咲き乱れていた。
既に‘喰われた’のだろう。
もはや母ではない‘ソレ’を、覆うかのように、彼岸花は密集していた。
『母、さん…』
これは夢の続きなのか?
夢なら覚めてくれ。
もうこんなの、見たくない…!
絶望に打ちひしがれる自分に、謎の声は囁く。
《コレガ、ハジマリ》
始まり…?何の始まりだよ!
ふと足元を見てみれば、傷一つ付いていない砂時計。
『くそっ…!』
僕はただ、その砂時計を握り締めることしかできなかった。
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