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『悠斗!おはよう!』
『…ッ!』
びくっとした。
聞き慣れた声のはずなのに、過敏に反応してしまった。
『ど…どうした?具合でも悪いのか?』
『あ、だ、大丈夫…。ごめん、涼夜…』
今僕に話しかけたのは南 涼夜(ミナミ リョウヤ)。
僕の幼なじみだ。
幼なじみの声にも驚くなんて…どうかしてるな、僕は…
『悠斗、調子良くないなら無理して学校行かなくてもいいんじゃないか?どう見ても元気そうには見えないぞ』
『…大丈夫。いざとなったら早退するから』
『そっか、無理すんなよ?じゃ、行こうぜ』
こうして僕は先週の金曜日の朝と同じように、幼なじみと登校するのであった。
…だが、学校に着いてからは苦痛だった。
僕と涼夜はクラスが違う。
他に友達がいないわけではないが、心細い。
『(落ち着け、僕…。何を心細いことがあるんだ…。何も変わっちゃいないんだ…)』
…何も変わっちゃいない?
変わったじゃないか。
母がいなくなったじゃないか。
あの彼岸花に…もとい、砂時計にやられて。
あいつは言った。
《これが始まり》だと。
まだ続くんだ。
いつまで続く?
僕の心が壊れるまで?
僕の肉体が滅びるまで?
僕がいったい何をした?
自問自答している内に激しい頭痛に襲われ、僕は頭を抱えて倒れ込んだ。
当然、教室は騒然となる。教師は大丈夫かと駆け寄り、周りの生徒も集まってくる。
痛い。
いたい。
イタイ…
タスケテ…
意識が遠のくのに、そう時間はかからなかった…
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