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おかしい。
何かがおかしい。
僕はあれから、あの夢を見ていない。…たぶん、半年くらい。
涼夜は夢の中ではあいつに殺されたはずなのに、現実では死ななかった。
それが気に食わなかったのか、あいつはあれから僕に話しかけてすらこなくなった。…まぁ、ありがたいことなんだけど。
でも、最後に聞いた《邪魔しないでね》という言葉。
今までは何の感情もこもらない、ただの棒読みだったのに。
あの時だけは、はっきりと感情がこもっていて、いまだに耳に残っている。
…さて、涼夜はというと、あれから全く変わることなく僕と登下校をしている。なぜあいつは涼夜を殺せなかったのか…今でもわからないけれど。
大切な幼なじみであり、親友を無くさずに済んでよかったと思っている。
『なぁ悠斗』
『ん?どうしたの涼夜』
『最近さ、物騒な事件増えたよな』
『物騒な事件?』
『知らないのか?ついこの間も近くの高校で襲撃事件があって、10人くらいやられちまったんだぜ』
『やられた…って…殺されたってこと?』
『ああ。しかも犯人はまだ捕まってないらしい。俺達も気をつけなきゃいけないってことだ』
…まさか。
あいつが…涼夜の代わりに殺した?
10人も?
『…涼夜、いつぐらいからそういう事件増えだした?』
『ん?えーっと…ちょうど半年くらい前にお前と一緒に早退した日以降…かな。老若男女問わず100人くらい襲ってるらしい』
『もしかしてその犯人…』
『…捕まってない』
…間違いない。
あいつだ。
あいつがやってるんだ。
僕の身近な人間が殺せなくなったから。
無差別に襲い始めたんだ。
…100人も!
『…悠斗、何か知ってるのか?』
『…いや、知らないよ』
『…悠斗、お前は昔から嘘つくのが下手だな。俺ら親友だろ?お前一人で抱え込んでも辛いだけだぞ?』
…涼夜…
僕は、打ち明けるべきなのだろうか…
あの、惨劇を。
『俺…一時期お前に嫌われた時、ホントに辛かった。お前の気持ちをわかってやれなかったから。だから今度は…わかってやりたいんだ』
『…涼夜…』
涼夜の、素直な気持ち。
大嫌いなんて言った自分を本当にバカだと思った。
もう、迷いはなかった。
『…じゃあ涼夜、今日、うちに来て』
僕は、全てを打ち明ける。
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