5人が本棚に入れています
本棚に追加
『悠斗、ちゃんとお勉強してる?お菓子持ってきたわよ』
ドアを開けて、母が入ってくる。
『わぁ!おいしそう!ありがとう!…あ、そうだ』
ふと、そこで砂時計の存在を思い出す。母にお礼を言わなくては、と。
『ママ、この砂時計、ママが買ってくれたの?すごいきれいだね!ありがとう!』
お礼を言った途端、母の笑顔が曇る。
『…え?砂時計?そんなの買った覚えないけど…』
『え?だってほら、ここにあるよ?』
自分が指差す方向には、砂時計。母は怪訝な顔をしてそれを見、自分の方に振り返る。
『…悠斗、きっとお勉強のしすぎなのよ。少し休みなさい?』
母が、なぜそんなことを言ったのかわからなかった。
ただ、母があまりにも‘休め’と言うから、だるくもない体をベッドに沈めたのだ。
『ママ、ぼく眠くないよぅ』
『いいから、ちょっと休みなさい。お勉強も大事だけど、休むことも大事よ?』
そう言う母の顔は、いつもの笑顔だった。
┼┼┼┼┼
今なら確信が持てる。
あの時母には、砂時計が見えてなかった。そして、きっと今も。
あれは…僕にしか見えないんだ…
最初のコメントを投稿しよう!