命の砂時計

5/5
前へ
/46ページ
次へ
『悠斗、ちゃんとお勉強してる?お菓子持ってきたわよ』   ドアを開けて、母が入ってくる。   『わぁ!おいしそう!ありがとう!…あ、そうだ』   ふと、そこで砂時計の存在を思い出す。母にお礼を言わなくては、と。   『ママ、この砂時計、ママが買ってくれたの?すごいきれいだね!ありがとう!』   お礼を言った途端、母の笑顔が曇る。   『…え?砂時計?そんなの買った覚えないけど…』   『え?だってほら、ここにあるよ?』   自分が指差す方向には、砂時計。母は怪訝な顔をしてそれを見、自分の方に振り返る。   『…悠斗、きっとお勉強のしすぎなのよ。少し休みなさい?』     母が、なぜそんなことを言ったのかわからなかった。   ただ、母があまりにも‘休め’と言うから、だるくもない体をベッドに沈めたのだ。   『ママ、ぼく眠くないよぅ』   『いいから、ちょっと休みなさい。お勉強も大事だけど、休むことも大事よ?』   そう言う母の顔は、いつもの笑顔だった。       ┼┼┼┼┼   今なら確信が持てる。   あの時母には、砂時計が見えてなかった。そして、きっと今も。   あれは…僕にしか見えないんだ…  
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加