一章

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「そういえば…綾那ってどこか入りたい部活とかあるの?」 うちの高校って一度はどこかの部に所属しなくちゃいけないって決まりがあるから…それが転校生にも適用されるかは知らないけど。 「うん、先生から聞いてるわ…私美術部に入りたいと思ってるの」 「へぇ~絵描くの?」 「うん風景描くの好きなの、ここって自然が多いから描きたい所が多くて目移りしちゃう」 凄く楽しそうに笑う綾那、私はその笑顔に…少し見惚れた。 「…っ、私も木削るの好きなんだ、家の裏が山だからそこから手頃な木拾ってきたりして彫刻もどきな事してる」 さりげなく綾那から目を逸らし、違和感ないよう話しを続ける。 「え?律って美術部なの?」 「いーや私は剣道部員でござる、彫刻もどきは趣味」 「ござるって…ふふ、でも残念…一緒かなーって期待しちゃった」 本当に残念そうな綾那に多少の罪悪感を覚えた私は 「期待裏切っちゃってごめんね?その代わりって言ったら何だけど、後で美術部の友達紹介するね」 と提案してみる。 「ありがと律、お願いします」 そう言って軽く頭を下げる綾那に「いいよ」と笑い掛けた。 そんな話をしていると、ようやく全校生徒が列び始業式が始まった。
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