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<現実>
目が覚める、見えるのは天井、しばし呆然としたから思い出すのは……心に刻んだ誓い。
「っ!……リディア!」
思わず装置から飛び出し、傍で驚きに目を見開く研究者風の男に詰め寄る。
「おい!もう一度だ!もう一度俺をあそこに送れ!」
その男はすぐに驚きから立ち直り、俺を落ち着けようと言葉を発する。
「分かった、分かったから落ち着け。君は数少ない生還者なのだから…」
男はプロジェクトの責任者と名乗り仮想の現状を語った。
しかしそんな事俺には関係ない
「ぐだぐだ言ってないで送れっつってんだろ!救うと誓った奴が向こうにいるんだ!!」
「もう一度行くというのか!?そんな無茶な!私の話を聞いてなかったのか!」
「聞いてたからこそだ!あいつをあんな危険な所に放り出しておけるか!!」
俺がそう怒鳴るとその男はしばらく沈黙した後妙なことを言いだした…
「そうか…君はあのAIと接触を……そうか、だから奴と互角の勝負ばかりか一時的に撤退させることができたのか…」
そして男は、そんな意味不明な言葉の次にこう切り出した
「分かった、君をもう一度あっちに送ろう、だが一つだけ覚えておいてくれ……君が守りたいと言うそいつはプレイヤーではない」
「あぁ!?何を言ってるんだ?」
そして、言葉がその男から発せられた…
「そいつは……AIだ」
頭が真っ白になった。…AI?
ありえないと否定する思考
どういうことだと混乱する思考
そうだったのかと肯定する思考
これらが複雑にせめぎあい、しかし最後に……
肯定の意志が勝った。
「そんな馬鹿なことがあるか!いや……仮にそうだったとしても俺は行く!」
「それは分かってる、しかし条件として任務と…プログラムを預かってもらう」
彼女を助けるためなら何でもいいという気持ちだった。
「…なんだ」
「任務は反乱者であるカークの消去だ。プログラムは管理AIの権限を受け継ぐことができるものだ。カークは管理AI同等かそれ以上の力がないと消去は不可能だろう」
「分かった、カークを倒せばいいということだろ?それならプログラムを使わなくても大丈夫だ」
俺は先刻の仮想現実内での戦闘経験から少し自信過剰に言い放った。
「…あいつは刻一刻と力を増している、気をつけろ」
その言葉を最後に、その男は装置の操作を始め、俺はもう一度装置の闇に潜りこんだ。
彼女を救いに行くために…
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