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「‥‥気が変わりやした」
「俺もアンタを殺したくねェ」
「‥‥え、」
「何だよ悪ィか」
じろりと睨んでから突きつけていた銃を下ろすと、こいつは途端弾けるような笑顔になった。それを見て、あぁ殺さなくてよかったなー、なんて思ったり。張り詰めていた空気が柔らかくなると、俺は地面に尻餅をついてしまった。柄にもない、俺としたことが緊張していたようだ。
「じゃあ2人で脱出する方法を考えよう!」
「おー」
やる気のない声で返してもこいつはイキイキとしている。そしてやっと俺はこの馬鹿の答えが正しかったのだと確信した。その証拠にどうしてもにやける口角を抑えることは出来ないのである。右手に握る銃をもう一度しっかりと握り締めて、空に銃口を向ける。あばよさっきまでの俺、とか恰好いいことを思いながら人差し指を動かした。
銃からはカチリという空っぽの音しか出なかった。不思議に思い何度も引き金を引くが、カチリカチリというばかりでバアンなどという音は出てこなかった。ということは、どちらにしても俺にはこいつを殺す術など最初から持ち合わせていなかったのである。少し思考を巡らせてから、ちらりとこいつのリュックに視線を向ける。すると少し開いたそこから覗くのは、俺のより幾分か物騒な、何連射も出来そうな感じの素敵な武器が。冷や汗が背中を伝うのを感じながら目線を上に持っていくと、見たこともないくらいの笑顔がそこにはあった。
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