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「すげーなァ、コレてめーが全部やったのか」
気絶もしくは瀕死状態の奴らの山の頂点に立つ私に誰かが声をかけた。後ろを振り返るとその声の主はすぐ側にいて、気配の消し方がうまいなあ、なんて少し驚い―――その人の顔を見て違う意味で驚いた。
「鬼兵隊に入らねーか」
あれれ、上手い具合に話が進んだよ。よかったよかった‥‥じゃなくて、え、あれ、ちょっと待って。私アンタの顔どっかで見たことあるんだけどなー。こんなギスギスギラギラした雰囲気じゃなくてもっとほわほわした感じの。
「話は聞いたがてめーみたいな奴なら大歓迎だ。俺がここの総長の、」
高杉、という名前を聞く前に私は駆け出していた。足元に転がっている鉄パイプをガランと蹴飛ばし、左目の眼帯の死角から思いきり殴りかかった。しかし、大の大人も一発で失神するはずの右ストレートは高杉の左手によって難なく抑えられ、勢いがついていた体は急ブレーキをかけて止まった。途端に顔に熱が集中する。
「ひでえ挨拶だな」
にやりと笑う顔とすぐそばで聞こえる声に焦った。今度は左手で殴りかかる。が、空いている方の手で抑え込まれてしまう。押しても引いても離してくれない。
「何だってんだよ、入れてやるっつってんじゃねーか」
「あ、アンタが高杉‥‥?」
「そう言ったのが聞こえなかったか?」
「信じない、」
「ンだとコラ」
「高杉‥‥、アンタこないだの雨の日‥‥、捨て猫拾ってたでしょォォォ!!」
「ハァ?!」
高杉がぎくりとなったところで頭突きをかまして手を振りほどき、少し距離をとった。額を抑える手から覗く高杉の目には少し焦りが見える。
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