出会いは突然に…

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家が家だから外で遊んだ事は少ない。と水樹は言う。 やっぱり水樹は良い所の出だ。 少し家の話を聞いたらそう行き着いた。 そしていつの間にか水樹の昔話へと変わっていく。 それは、少し重たい話でもあった。 「私に寄ってくる男共はみんな私の容姿目当て。あの目……吐き気がする」 水樹はぬいぐるみを抱く力を強めた。 無意識に強張る程に色々あったんだろうな。 「私は、最低だが友達を選ぶようになった。もちろん、最後には数えられるまで減ってしまった。だけどその数人の人達は私に優しくしてくれたし、こんな私でも受け入れてくれたんだ。量より質だと思っていたから、それからは友達を作らなかった」 何だか難しい話だ。 出会って数時間の俺に何故そこまで言うのか。 それは出会って数時間の俺だからこそ吐けたのか。 ただ、水樹は苦しい思いをしてきたって事だよな。 「私と関わろうとする人間は自分に醜い利益を求めた。でも君は違う。最初こそまた同じだと思っていたが、今はもう違う」 ニコリと微笑みかけられ、思わず目を逸らす。 今のはヤバい。可愛すぎる。 「嬉しいんだ…。ただ、嬉しかったんだ。”普通”に接してくれたことが」 真正面から言われると、半端じゃない程照れるんだぞ。 「最後に私からの頼みがある。聞いて…くれるか…?」 不器用なりに、頑張ってきたんだろうな。 俺は一度水樹の目を見て『うん』と答えた。 「私と……友達になって欲しい……」 少女は目をギュッとつぶって頭を下げ、俺と友達になりたいと言った。 そんなの、こっちがよろしくお願いしますだ。 泣きそうな生徒会長に返事、しなきゃな。 「俺達はもう友達だ。友達ってのは気付いたらなってるんだよ。一々そんなやりとりなんていらないんだ。もう一度言う、俺と水樹は友達だ」 周りの音は相変わらずうるさく、ムードも糞もないが 俺の言葉を聞いた目の前の生徒会長は小さく頷いて微笑んだのだった。
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