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視線を反らした先には窓の中。灰色雲が空を覆い、夜の暗闇が空気を覆い、雨の雫が地面を覆っている。
アラヤの答えが雨宿りなら頷けた。最も、嘘という可能性も捨てた訳ではない。未だ素性は知らず仕舞いなのだから。
盗み。強盗。金品強奪。
そんな言葉が宗矢の脳裏を過る。
だがアラヤはのほほんと、のんびりと、やんわりと。
「ここの街は随分澄んでいるんだね。気の流れも、質も、音も、色も、大きさも。どれも驚きものだけど、ここがその中心だったからついついフラフラ~、と来ちゃた」
「はい……? 気、ですか? そらまた随分な単語が出てきたな」
宗矢は眼を丸くする。“気”。そんな単語が少女の口から出るとは思わなかったからだ。
「うん。龍脈って言ってね。全てのこの世を連ねる気の心臓。源って、言うのかな? それがこの街を包んでいたからそれはもうビックリだよ」
「俺はお前の言っている事にビックリだよ……」
アラヤは両手を広げて大胆に表している。眉間に指を当てながら、宗矢は重い吐息を吐き出した。
龍脈。そんな言葉には聞き覚えはないが、気ならば覚えがある。否、最早それは世界(このよ)にとって常識と言えるだろう。
「おいアラヤ。お前、“世界の穴”って知ってるか」
「世界の穴? うん、識ってるよ」
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